日常トライ&エラー

オーケストラからアメリカンフットボールに転身したら、でかくなりすぎて親に認識されなくなったサラリーマンの日常。

いいリズム

7月の終わりにフィッシュマンズの映画を観た。
 
魂が震えた。
大江健三郎の小説を思い出した。
 「もし十四年間といくらしか生きられないとすれば、カジね、私としてはきみにこういうことをすすめたいんだよ。これからはできるだけしばしばね、一瞬よりはいくらか長く続く間の眺めに集中するようにつとめてはどうか?自分が死んでしまった後の、この世界の永遠に近いほどの永さの時、というようなことを思い煩うのはやめにしてさ。」
 
東京オリンピックもあと1週間だ。
いろいろな人が存在の証明をしている。
 
おれはここにいる。
それをどう証明するか。
30年まであと2年。
いいリズムに乗れている気がする。
 
 
 

草食動物的に記憶を取り出す。

草食動物は、胃がいくつもある。

一度食べたものを、一度で消化しない。

口から胃、胃から口に、

食べたものを移動して、

咀嚼する。

 

僕は何でも食べる。

嫌いなものはない。

 

僕は何でも記憶する。

嫌なものは寝たら忘れる。

 

草食動物のように、食べたものを逆流させることはないけれど、

記憶したものを、ときに取り出す。

 

ああそんな日もあったなと、

今日の、そして明日への糧にする。

村上龍『希望の国のエクソダス』

自分は会社なんかに縛られていないと思ってた。

昇給なしという会社の方針を聞いたときだけど、信じられないことに、目の前が真っ暗になったんだ。昇給といっても、年に二回、せいぜい数千円だよ。

しかし、恥ずかしい話だが、なくなってみて、それがモチベーションになっていたんだなと、気づいた。

それまでは当たり前のことをだったんで、気づかなかったんだろう。

サラリーマンにとってサラリーは恐ろしいもんだ。自覚がなくても、結局はそれが精神まで支えている。誰かに認められたり、誰かに褒められたり、ということの象徴が年に二回の昇給だったというわけで、おれはそれが無くなってみて初めて気がついたということだけど。

ネコがいるよ

仕事終わりに母親からラインの通知。

 

ネコがいるよ

 

60代の母親にもとうとうボケが入ったか、そんなことで連絡してくるなよと、心配しつつ苛立ちつつ、

電話をかける。

ご希望のビデオ通話に切り替える。

 

 

ネコがいた。

 

 

真っ白の毛並みで、肌色の目やにが少し残るネコ。

3歳くらいだろうか。

 

家に紛れ込んで弱っていたのを拾ったらしい。

 

そうか家にネコがいるのか。

いるか、ネコぐらい。

 

なんだか気持ちが整った。

こんな仕合わせもありだなと、

帰りしなに微笑む。

 

ああ明日も生きようと、

グリーンラベルのプルタブを開いた。